寝酒は効果的か?


最近、気になることがあります。当院に不眠を訴えて来られる方は結構多いのですが、その方達は寝酒をしている場合が多いという事です。「寝る前にお酒を飲むとすーっと良く眠れるんですよ」とか「やっぱり寝酒はかかせないね」とか「ぐっすり寝るには酒が必要なんだよ」とか。でも、良いことばかりではないようで、「飲むと寝られるんだけど、すぐ目が覚めるから、また飲んでるうちに朝になっちゃって」「最初は良かったんだけど、今はあんまりきかないね」「よくきく時もあるけどそうじゃない時もあるよ」ともおっしゃいます。果たしてお酒を飲むとよく眠れるというのは本当なのでしょうか?

お酒を睡眠薬代わりにしている人、結構いらっしゃいませんか?適量のアルコールを摂取すると寝付きがよくなり、眠りが深くなるというのは本当です。「お酒を飲むと良く眠れていいんだ」と思うと、ついつい毎日飲んでしまいがちです。昨日はお酒のおかげで良く眠れたから、今日も、明日も・・・・。しかし、残念ながらこれは一時的な効果なのです。

睡眠について少し説明します。睡眠にはレム睡眠(浅い眠り)とノンレム睡眠(深い眠り)があります。入眠から朝目覚めるまでに、約90分〜100分のサイクルでレム睡眠とノンレム睡眠を交互に規則的に繰り返しますが、だいたい一晩に4〜5回繰り返すのが一般的な型と言われています。そのサイクルが崩れると、疲れが残ったり、昼間眠気を感じたりするようになります。レム睡眠もノンレム睡眠もどちらも必要なのですが、飲酒によってレム睡眠が極端に減り、睡眠の後半は眠りが浅くなるため、睡眠の質が悪くなります。また、アルコールの睡眠作用には耐性が生じます。ですから、しばらく飲酒を続けると、最初に起こったような入眠睡時間の短縮などの効果は徐々になくなっていきます。そのため、寝酒を中止すると、以前よりも寝つきが悪くなる可能性があります。加えて、睡眠が浅くなってたびたび目が覚め、さらにその反動でレム睡眠が増加し悪夢を多く見る、といったことが増えてくるようです。そうやってまた眠れなくなると、またお酒を飲むようになります。しかし、以前程の効き目がないため、お酒の量が増えてしまいがちです。

眠れない→寝る前にお酒を飲むようになる→一時的には良いがまた眠れなくなる→お酒の量が増える→体を壊す可能性が高くなる、という悪循環は避けたいものです。お酒に頼って睡眠をとろうとすると思わぬ落とし穴に陥る事がありますので、充分注意が必要です。



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