Chicken Shuck #23 [Wooden Boards]

・ウッドボードに乗ってくれ!


ウッドボードは凄いよ!ことにそれが名のある逸品であれば、なによりも見た目に圧倒されるのがまず普通。




ウッドのサーフボードっていうとサーフィンする者ならまず思い浮かぶであろうバルサボード。バルサは主に1940年代から50年代にもっともポピュラーに使用された素材なのだが、当時サーフボード用の木材としては最も比重が軽く、シェイプしやすいという理由で使われた。
それ以前はというと、レッドウッドなどで作られた
プランクと呼ばれるような、その名の通り単純な板。しかしそれはいくつかの違う素材を組み合わせたりもされて、古典的な美しさを持っているものが多い。
とはいえ、現在のサーフボードが持ち合わせているような機能性はほとんどデザインされていない、つまりただの長い板。
もうひとつはパシフィック・ホームズといったメーカーが作る、ホロー構造(中空ですな)のパドルボード(最近ではクックボックスという通称も知られてきた)などがサーフボードの主なもの。

ご存知のようにサーフィンの歴史は古く、数百年単位で遡ればハワイなどの王侯貴族たちの遊び(スポーツ的な要素や、ある種儀式的な要素もあったともいいます)にまで行き着くのだが、その時代から使われていたボードに類するものとして最近復興の動きが見られる
アライアやオロなどがある。
これも最近フィンレスサーフィンのアイデアとともに時々見られるようになっていて、このデザインとスタイルは今また一つのサーフデザインとして発展しようとしている。




ここ10年くらいの間に、
静かだけど確実に、世界のあちこちでウッドボードに取り組むデザイナー・シェイパー達が増えているのを感じませんか?。
冒頭のバルサやアライアなどはもちろん、レッドウッドなど重量級のとても高価で美しい木材を用いた観賞用のボード。




外皮をウッドのコンビネーションで組み上げてコア(芯材)にスタイロフォームなどを使い、あくまで素材のキャラクターとシェイプデザインを機能的に融合させたダニー・へスのウッドボード。



伝統的なバルサボードの製作アプローチを基本として、素材をバルサと同じように軽量で強度を持つ桐を使ったトム・ウェグナーのウッドボード。

そして伝統的な製作手法と現代的な工作アプローチを駆使して超高度な技とリアルなシェイプが融合した、ボブ・ミッツベンとリック・クロウが作るAGAVEのウエスタンレッドシダーのウッドボード。




お気づきだと思うけど、これらはみな(たぶんほとんどは)実際に波乗りに使うことを目的に作られている。
(ところで、ここではモールドボードに木のスライスシートを貼り付けたパッコンものはウッドボードとしない、そりゃそうだ。)

いままでにもいろんな場面でお話してきたことだが、私、ウッドボードでサーフィンするのが大好きである。私のそれは、取り立てて求道的な取り組みだったりするわけではない。
なによりその自然材だからこそ発する雰囲気と、
うっとりさせられる見た目。
持ってみれば、たいていはとても重い(普通よりちょっとだけ重いってくらいのもあれば、ヘスのようにむしろ軽いと感じるものもある)。そして例えばバルサボードならば、50年も昔のサーフィンやサーファーへと想像が膨らむ。しかもそれは紛れもないサーフボードなのだ。乗ってみたくなるじゃないか!
だって時代が時代なら、今日から始めるヤツだってバルサで波乗りしたワケよ。
いいじゃないの!





そりゃあドキドキするさ。なんたって高価なんだもの、サーフボードとしては特別に。
いいんだろうか、こんなことしちゃって。ずいぶん昔、最初は、少しだけそう思った。
カッコつけてんじゃないのよ。別にお金持ちじゃないクセに、この太っ腹な行為がそう簡単にできるもんじゃないと思ったら逆にものすごくワクワクした。

初めてバルサを下ろした時のことを思い出してみるとね、こんな感じ。
たぶん今の普通の乗りやすいサーフボードに比べたらきっと呆気ないほど何も起きないんじゃなかろうか。それでその結果にちょっとがっかりして、だけどずっと試したかったことをやってみたんだから満足じゃないか、なんて思ったりするかも、とかね。
そんな風にちょっと利口ぶった想像とも予測ともつかない気分だって、ちょっとだけあった。

しかしながら、そしていよいよ乗ってみたらそれは、想像通りどころか、まったく
ボード想像を超えたものだった。
最初のウッドボードは贅沢にもなんと、デイル・ベルジーに作ってもらったバルサの10フッター。もう随分前の事になります。
その時は恐るおそる、小さな波を滑ってみた。
そう、何本かの小さな波に乗って滑っただけだし、実際たいしたことは起きなかったのだが、信じられない滑走だった。

思ったよりもパドルはいいぞ、波のキャッチもすごくいい。そして走り出したそれは凄く勢いがある。勢い、でもありなんだか滑りそのものが堂々としている。
逆に中途半端な板の上での移動、例えばわけも無くほんの1歩だけ動いてみたりするようなアレ。そんなマネなんかすると明らかに滑りの勢いが変わる。つまりそのぐらい勢いがあるっていうことなんだけど、だから自然
波に従う気分になる。

分かりますか?。あれこれ想像してしましまうけど、想像は所詮想像。体験したことがないんですから。
それを体験しちゃうと、それからはもう、あれもこれも、どんなウッドボードでも持ってるもんはみんな乗ることにしました。


デイルが作ってくれた何本かのバルサボードの中に私のスーパースペシャルがあります。この板の話は今までにもサイトのどこかでおしゃべりした事があります。

私はデイルのバルサでも歴史に名前の残る名デザインにいろいろ乗ってみたいので、それこそいろいろなモデルをオーダーして作ってもらいました。
ある時デイルは、お前にピッタリなのはこんなシェイプだぞ、と言って説明してくれたのが少し短めのダブルエンダーでした。シェイプもサイズも全部デイルにお任せ。デイルはストックしてある材料の中から特に軽くて質の素晴らしいバルサ材をバランスよく組んでその板を作ってやるぞ、そのとっておきのバルサ材を引っ張り出して、そう言ってくれました。
その時デイルさんがシェイプルームで私に言った言葉、
"オレにはウマ(シェイプ台ね)の上にその板が見えてるぜ"


閃いたシェイプを楽しんだデイルさんは、こういう時の仕事は早い。
確かそれから3ヶ月後くらい経って、出来上がりの知らせ。次の出荷と一緒にショップに届いたその板は8'7"のダブルエンダーです。大きめのバルサばかり作ってもらっていた私にはそのやや細身で短めの板は、ものすごく美しい鳥肌ものの1本。そして一方で、波を選びそうな感じがしてなかなか下ろす機会がないままでした。

何年も経った夏のあるお休みの日、珍しく風は1日オフショア、波は腰・腹くらい。しかもブレイクもなかなかよろしい。私はたまたま家に置いてあったその板に乗ってみる事にしました。




その板に対して抱いていた想像(そうね、乗ってもいないクセにね)は1本目の波で吹っ飛びました。
いや、パドルした時点で、あれ?違うぞ、とは感じていました。素晴らしくテイクオフが良くて、スムースなターンと勢いのある滑り。VELZYそのものでした。そしてバルサボードの時代、デイルが作った板に乗ったサーファーが感動したといわれるVELZYボードの威力ってこれだ、ということを理解しました。

ついでにもうひとつ、
超絶体験ウッドボード。
アガベのウッドボード。ボブと相棒リックが2人の力を合わせて作る、とんでもないウッドボードです。超ハイクオリティなウエスタン・レッドシダーで作ります。詳しい製作プロセスはまた別な機会にするとして、私はここでもデイルが私に授けてくれたマジックナンバー、8'7"に決めてフィッシモンズをオーダーしました。

この板は出来上がるまでにゆうに半年かかりました。その出来上がりに感激したスキップさんが一番に乗せてくれ!、と言って進水式をスキップさんにしてもらったストーリーは以前にご紹介しました。
スキップさんに乗ってもらった次の日に私の番です。オーダーしてから1年くらい経っていたでしょうか。場所は馴染みのグランビュー、ルケイディアという古くて小さなエリアの気分のいいスポットです。胸・肩くらいのすごくいい波で下ろせたのには感謝しています。




やっぱり!、1本目からやられました。けっこういいセットでグッドシェイプのピーク。
すごい事、言っちゃいますよ。テイクオフするその時の感触が板から足に伝わり、水の中のフィンとレールが心の中で見えました。笑っちゃだめよ、ホントなんだから。

その後?。まるで岩が転がり落ちるのかと思うようにボトムに向かって落ちていくので、こりゃせっかくだからと閃いて、ボトムターンはレールとフィンをいつもよりもグッと意識してナチュラルにターンをリリースすると、どこに行くのかと思ったらものすごい勢いでかなり遠くのトップめがけてぶっ飛んで行く。
と言いたいところだが、これはもうぶっ飛んでなんていう生易しいもんじゃない。大砲から人間が飛び出す見世物あるでしょ、あの飛び出す人間の気分。しかもその後は、ゴキゲンな11フッターかしらと思うほどのグライド。これがグライド!。
次の波。ちょっと余計に動かしてみたら、軽いとは言えないあの板がグイグイ動きに着いてくる、
ドリームボード!




ウッドといってもそれこそ自然の賜物だから、その素材の豊富さは数え切れないけど、それでもサーフボードに使うとなればやはり今使われている素材は中でも優れているに違いありません。さらにそれぞれ素材にいろいろな持ち味があります。

木が持っている大きな力はサーフボードでも発揮されるのです。どれも乗り味違います。でも、どれも凄い説得力があるのです。それが自然の力なんでしょう。
それが何故なのかは、分かりません。

サーファーなら是が非でもお持ちなさい、そして乗りなさい、ウッドボード!


恥ずかしながら、店主でございます。以前、某誌に載っかった写真を流用ね。





Guess Who? #21 [Coming soon?]

・次回を待ってね!



HE'E NALU #23 [Coming soon?]

・次回を待ってね!