1999年11月06日

水筒の検査冬バージョンUPしました。
2002.12〜2003.1にかけて調べ、藤沢市学校保健会冊子に掲載したものです。2003.5

水筒て本当に安全なの?
答えは読んでから

注意:ここに記載する「ワンタッチタイプ蓋」は、蓋内部に残水の残るタイプのことをさします。
注意:この実験で検出された細菌については、同定の結果、常在菌であり大腸菌を含め、健康に影響する細菌は検出されていません。

【はじめに】  児童生徒が、学校生活でなにげなく飲んでいる飲料水について、毎年検査をしてきました。去年(1998)、養護教諭との勉強会をきっかけに、より積極的に参加することが必要ではないかと考え、本来学校に持参す必要のない「水筒の水質」について調べたところ、意外な結果となりここに報告させていただきます。
【学校の水】  学校に供給された水道水は、地表に設置された受水槽に一時蓄えられ、その後校舎屋上の高地水槽に移り各蛇口に配給されます。学校薬剤師が実施する定期検査では、蛇口からの水に含まれる遊離残留塩素濃度を測定し飲料水として適正であるかの判断をしています。
 近年、水道水に含まれる有害物質のトリハロメタンの報告などから、自宅から水筒を持参し学校の水は飲まない方向へと進み、学校での水道使用量は、生徒数減少も影響し減少傾向にあります。使用量が減る事で、受水槽・高地水槽の循環が悪くなり、蛇口からの残留塩素濃度は検出しにくくなります。受水槽に蓄えた水は、災害時の備蓄飲料水になる都合上、備蓄量を減らすにしても限界があります。使用量を増やせばある程度循環が早くなります。しかし、供給元の水道水自体が最初から、残留塩素濃度が低い場合には現在のシステムでは対処出来なくなります。1999年5月に実施した市内全域の遊離残留塩素濃度の分布図です。これからわかるように、平均0.3−0.4ppmと低目の数値でした。1997年調査した時は、丁度O−157が問題になっていた時期とも重なったからかもしれませんが、平均で0.6ppm前後と学校の施設としては都合が良かったわけです。一概には言えませんが、学校施設の場合、0.6ppm以上の供給が必要となります。学校の給水施設をシミュレーションした物で す。0.6ppmの時、蛇口から0.1ppm出ていた学校でも、 0.3ppmになると検出されないケースもあります。水道局に確認したところ、末端濃度は0.3ppmを目標に消毒剤の使用量を調整しているとの説明でした。残留塩素濃度が全く検出されない学校の水には、どれ位の一般細菌があるのでしょうか。定期的に実施する水質検査は、遊離残留塩素が検出される状態で調べますので、ほとんど細菌は検出されません。そこで、全く遊離残留塩素が検出されない学校について一般細菌数を調べてところ、細菌は検出されませんでした。全校について実施すれば良いのですが、時間の都合で数校となっています。
【水筒水】  児童生徒の持参する水筒水について、細菌数を調査致しました。数校の協力のもとに調査した結果を図に示します。細菌数が多かった水筒に、ワンタッチ蓋付きの魔法瓶タイプがあります。細菌数は数え切れないほどでした。調査した魔法瓶タイプでは、新品の水筒以外は全て多量の細菌が検出されています。魔法瓶以外の水筒の場合は、それほどの数ではありませんが、物によって少ない菌数となっています。特に細菌数の少ないものとして、学校側としては、持参を禁止している場合もある、ペットボトルを水筒代わりに使っている場合です。
中学校で生徒が持参してきた水筒の水を培養した時の写真です。これは水筒の中にいる細菌で特に乳糖を分解し、酸を生成・ガスを発生する菌について調べた物です。酸を生成した場合、培地は黄色に変わります。
ガス発生菌
(乳糖ブイヨン培地使用)
約6割の水筒からガス発生菌を検出しました
特にひどい物は右の写真で、培養後4時間で既に沈殿を起こすほどの物です。
通常は48時間培養して、結果をみます。普段、プール水の検査をしていますが、検査した水筒水でプール水より細菌数・ガス発生菌が少なかったものはほとんどありませんでした。
上記水筒の一般細菌数を調べている時の写真ですが左写真は平均的な数の物で近寄って見ると細かい細菌が無数にコロニーを形成しています。
カウント不可となります
 これらは、実際に児童・生徒が使用(学校に持参)している水筒について調べたものです。
学校での実態調査のグラフです
平成11年6月調査
次に、使用率の高い、魔法瓶タイプと、比較のためペットボトルについて学校薬剤師会内部で調査しました。
  検査に使った水筒は、2年間使用しているワンタッチ蓋付き魔法瓶と、リサイクルしたペットボトルです。中身は、十分に加熱した自家製麦茶と無菌状態を確認しながら使った水道水です。 
1.前日に麦茶を作り、ガラス容器に移し変え冷蔵庫で冷やし、製氷皿で作った氷を入れ魔法瓶に充填。ペットボトルは水道水で洗浄後、充填。 《結果》両容器とも一般細菌数:無数 ガス発生菌あり
2.水道水をそのまま、製氷皿で作った氷と共に、魔法瓶に詰める。ペットボトルは水道水で洗浄後、そのまま詰める。念のため水道水も検査 《結果》魔法瓶に一般細菌数:無数 ガス発生菌あり。
ペットボトルと水道水からは検出されず。
3.製氷皿の氷を検査。 結果》一般細菌数は2〜30個検出、ただしガス発生菌は無し
4.冷蔵庫でガラス容器に充填し冷やした麦茶を検査 《結果》一般細菌数:無数 ガス発生菌あり。
5.麦茶をやかんで作り、あら熱を取った後検査。注ぎ口をラップで覆い冷蔵庫で一晩冷やした後検査 《結果》両方共一般細菌・ガス発生菌は検出されず。
6.上記の麦茶を魔法瓶に詰め、ペットボトルにも詰め即座に検査、又、実際に持ち歩き約5時間後にも検査
《結果》即座に採取した魔法瓶からは、一般細菌数:無数 ガス発生菌あり。
ペットボトルからは、一般細菌数が約20個前後検出されたがガス発生菌は無し、5時間使用後はペットボトルで一般細菌数が少し増えた程度。
以上の実験経過から まず言える事は、冷蔵庫で冷却する際に別容器に移し変える事で、ガラス容器から汚染される可能性がある事です。製氷皿が汚染されている場合もあります。魔法瓶の場合、たとえ汚染されていない物を詰めても、即座に汚染された物が出て来ます。実験ではワンタッチタイプの物を使用していますので、検査では念のため注ぎ口と内部から直接採取して調べています。検査回数は平均3回実施した結果です。
魔法瓶タイプの水筒自体が細菌汚染されている事が確認できましたので、消毒方法を検討してみました。
1.水道水で良く洗って、食器乾燥機で乾燥 2検査(水筒の中身とワンタッチ蓋の残水)とも不良でした。
2.熱湯で良く洗って、食器乾燥機で乾燥 2検査とも不良でした。
3.家庭用塩素漂白剤高濃度で一晩浸け置き消毒 2検査とも不良でした。
4.業務用塩素漂白剤高濃度で24時間浸け置き消毒 2検査とも不良でした。
5.全体を、煮沸消毒5分 2検査とも良好でした。
一般細菌数:中身平均5個 注ぎ口平均3個 
ガス発生菌両方から検出あり
水道水を中に入れて検査(水道水は同時に検査し無菌状態確認)中から直接の方が若干多いようです
結    果 煮沸消毒が一番効果があるようでした。最後に試した結果になりましたが、実は、最初に試した消毒方法でした。しかし、検査する時に、中身に麦茶を入れて検査した関係から、良い結果はえられませんでした。しかし、5分間の煮沸消毒でもまだ菌があることがわかります。又、実際に使用し約5時間後に検査では一般細菌数は元に戻り無数・ガス発生菌ありとなりました。
(他の箇所の文字が張り付いていました。2003.6訂正いたしました)
どこでそれ程早く増殖してしまうのでしょうか。  ワンタッチタイプの蓋の構造を写真に示しましたので御覧下さい。中身と外界を閉ざすシリコンパッキンがあります。これは、接着されているのではなく、プラスチックとスキ間があります。おそらくスキ間に染み込んだ細菌が蓋の開閉圧とにより染み出す事も考えられます。この部分には消毒薬が入りずらい事も考えられます。内蓋の軸回りには、麦茶をしばらく使うと黒く染みの様なものが出来て来ます。これは、塩素系消毒剤である程度消えることが確認されましたが、奥にあるスプリングについては確認していません。次にワンタッチボタンと内蓋を連結する部分は、分解出来ない構造のために確認していません。
 ワンタッチタイプ構造での細菌増殖の流れを考えた場合、次の様になります。
 冷水をいれている場合、ワンタッチ機構の構造から、蓋部分の中は冷却されません、そのため注ぎ口から中身を出した後、内部に残った残水の温度は、外気温度より少し低い温度となり、細菌の増殖が盛んになります。増殖した細菌は、内部樹脂にも付着します。飲料に使う時にワンタッチノブを押すことで、内部に溜っていた残水が内部に入ることになり、たとえ内部が0℃近く細菌増殖に適さない状況でも使う度に細菌数を増やす結果となるのでないでしょうか。
2003年の冬季実験で気づいたことを追加します。
中身に熱い飲み物(ほうじ茶使用)を入れた時、ワンタッチ蓋を押すと湯気と共に「プチュ」と内部の水蒸気が出て来ます。これは、内の温度が高い為、内部の圧力(飽和水蒸気圧)が外界より高くなっているためです。蓋を開けることで内部の圧力を逃がし大気圧と同じになります。
逆に、中身が冷やされた(氷入りなど)場合、水筒内部の空気が徐々に冷やされ、圧力は下がって来ます。
蓋を押したときに、圧力の差で、外気が水筒内部に流れ込みます。そのとき、蓋内部に残っていた液体も一気に内部に流れこむことになります。

外気が流れ込むことで、内部の空気(空間部分)の温度は外気温度に近づきます。蓋を閉めた後は、同じように徐々に冷やされ、圧力は下がり次の開放を待つこととなります。
ワンタッチ蓋タイプの魔法瓶水筒
平成11年11月現在このタイプの蓋は中蓋に内容物が溜まりにくい構造になった改良型が発売されています。
時間経過による細菌数の変化を調べました。 実験では、ワンタッチ魔法瓶を5分間煮沸消毒し冷却後に、煮沸製作した麦茶をヤカンのまま急冷し充填したものと、水道水を入れた物、又、比較のため塩素消毒(1昼夜)したプラスチック水筒に水道水を入れた3種類です。
結果 種類          直後   2時間後  4時間後  6時間後  8時間後
魔法瓶(水道水)    0      0      0      2      10
魔法瓶(麦茶  )   3      4      26     60     700
プラ水筒(水道水)   3      2      2      30      42
麦茶の場合細菌数は、6〜8時間経過した時点から急激に増える事が確認出来ました。魔法瓶自体が完全に殺菌されていたとしても、麦茶に残った細菌の増殖でこのような結果となっています。この場合の飲料に適する時間は製造後6時間になります。前夜に作った麦茶の保管方法によっては、朝の時点で飲料に適さない状態になっていることも予想出来、学校で実施した実態調査の結果と一致します。
まとめ 学校薬剤師部としては、このような状況にあるワンタッチ魔法瓶タイプの使用について、出来れば使用しない方が良いように思います。
 もし使う場合、毎日帰宅後の熱湯消毒をかかさず実施し、出来るだけ衛生的な中身を選択し使用することを御すすめします。水筒の中身については、学校を始め様々な情報として煮沸した麦茶を推奨していたはずです。しかし、現状を調べていくうちに細菌の栄養源になるお茶類をワンタッチタイプの魔法瓶に使う事には疑問があります。今回の実験過程で、普通の水道水を使った場合が一番細菌数が少ないことも確認しましたので、今後の参考にして頂きたいと思います。

 最後になりましたが、今回の実験は夏場の外気温度が30℃近くあり、中身は全て冷たい物でした。冬場に向い、中身の熱い物についてはこれから調査したいと思います。

冬場の実験結果2003.1
答え 水筒自体が悪いわけではありません、色々な状況で変わると思いますが、普段家庭で行っている水筒の消毒方法を煮沸滅菌に変えて、麦茶などは入れず新鮮な水道水を使えば安全な飲み物として携帯出来ます。
どうしても、麦茶を飲みたい場合は、朝作った麦茶を使い、6時間以内に飲むようにして下さい。

本音 学校には、整備された水道水があります。おそらくどこよりも安全な水のはずです。年2回の貯水槽の清掃をはじめ、日頃から水質に関して細心の注意をはらって管理されています。ご父兄が学校の水を心配される前に、一度ご自宅の水を調べてみてはいかがでしょうか、
子供達の言葉を借りれば「先生・・、僕の水筒の水って、中庭の池の水より汚いんだね」

   今回の調査・実験を行い次のことがわかりました。

学校の水 長期休みの時期を除けば、飲料水として最適である。
家庭から持参する水筒の中身 麦茶(お茶類すべて)は避けた方が良い
水道水が一番細菌の増殖が少なかった。
水筒の種類 ワンタッチ蓋付き魔法瓶タイプ 煮沸消毒を欠かさずに実施し、使用後は、直ぐに中身を出し良く洗浄後、ワンタッチ蓋部分を振り、内部に溜った水を良く切り、分解して乾燥する。
注意:煮沸消毒の時は、ねじを緩め、蓋を開放状態にして行う
プラスチック水筒 塩素消毒で十分に消毒でき、衛生的に使用可能
ペットボトルを水筒代わりに使用 約2週間をめどに交換すれば、衛生的に使用可能
洗浄は、水道水で中を洗浄し、時々塩素消毒使用

  ワンタッチ水筒を持参する場合の注意点(冷水)

麦茶+ワンタッチ水筒 煮だし麦茶を冷やす場合、その日の早朝に煮だし、冷却し充填する。
前夜、煮だした場合、やかんをラップで覆い冷蔵庫で冷やす。


早朝に充填し、賞味時間は、6〜7時間
が目安
水道水+ワンタッチ水筒 朝、水道水を充填し、夕方まで飲料可能

    水筒の中身から検出された細菌について

水筒内部の細菌 細菌の種類は、常在菌の為、病原性のある菌種は、見つかりませんでした。
細菌同定 東京薬科大学・病原微生物研究室(野口先生)の御協力

藤沢市学校薬剤師会 飯島幹雄

平成11年11月5日、藤沢市学校保健大会にて、上記内容の発表をさせて頂きました。
新聞等にも取り上げられている、学校に水筒を持参する是非については、学校薬剤師会としては結論は避けたいと思います。しかし、今回の調査より、御家庭を含め児童生徒が、衛生的に管理できるかどうかには疑問があります。

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