鰯雲風なき午後の海に出て | 山本 洋 |
椋鳥集ふ島裏の樹々 | 秋山 参森 |
報復は人の世のことと月わらふ | 小口 秀子 |
いずれは下山せねばならねど | 宮原西北 |
独り来て峡の秘湯に身をゆだね | 森 |
夜店の射的来客もなく | 洋 |
蚊遣火のかほり残りて更けゆきぬ | 北 |
たれを待つのかカンパリソーダ | 秀 |
項から顎への線に魅せられて | 洋 |
権現様の森に誓へば | 森 |
ひざまづき祈る娘のふるへをり | 秀 |
手術室より洩るるささめき | 北 |
冬枯れの野に一筋の川光り | 森 |
天馬のわきに寒月青く | 洋 |
宴なかば回転扉すり抜けて | 北 |
好みのタバコ煙ゆらゆら | 秀 |
花の庭ひとり留守居の昼さがり | 北 |
蝶の飛び交ふ里の便り来 | 森 |
西行忌偏屈庵も今はなく | 洋 |
大波小波跳んでひと息 | 秀 |
追ひつけば滋賀の都に宿をとり | 森 |
二十年ぶりときめく思ひ | 洋 |
目をそらし異国の虹を仰ぎけり | 北 |
麦藁帽子空に投げ上げ | 秀 |
釣り竿のしなる手に持つカップ酒 | 洋 |
影取といふ魔物ひそみて | 森 |
天窓に映る星にも願ひかけ | 秀 |
湯殿のあかり三十ワット | 北 |
大ぶりの玉兎の絵載るカレンダー | 森 |
椎の実落ちる主なき家 | 洋 |
そぞろ寒”銃後”は遠くなりぬれど | 北 |
オオボエの音は優しき天使 | 秀 |
自転車のサドルの高さ気にしつつ | 洋 |
岬の小屋に届く弁当 | 森 |
ひとひらの花手に受けてほほゑまむ | 秀 |
日差眩く今日卒業す | 北 |