治療のサイン


人間の体というものは、実に不思議なものだ。同じ事をやっても、人それぞれで反応が全く違う。一応、治療のマニュアルみたいなものはあるのだが、その通りにやって良くなる人の方が少ない気がする。

ある刺激に対して物凄く敏感に反応する人、全然感じない人。効果が出る人、出ない人。その時良くても後で悪くなる人、治療直後はダメでも後から良くなる人。本当に様々な方がいる。今でこそ、初めての患者さんでもある程度の予測はつくようになったが、やはり最初の治療の後はその結果が気になる。

僕がその日の治療をするポイントは、患者さんの体の治療のサインを消す事だ。たとえ少しくらい痛みが残ったとしても、体に治療のサインが出ていなければ、そこで終了という事になる。逆に、どこも痛くなくても体に治療のサインが残っていたとしたら、治療を続けなければならない。

治療したにもかかわらずまだ痛みが残る人は、そこの部分を慢性的に長期にわたって悪くしている場合が多く、体が治療の刺激に反応するまでに多少時間がかかる場合がある。こういう人は、次回の時にその日はまだ痛かったが、次の日はだいぶ痛みが取れたと言う人が多い。その時痛みがなくても、治療のサインが出ている所とは今はいいがこのまま放っておけば将来悪くなる可能性がある所で、こういう所は必ず治しておく必要があると思う。

その治療のサインとは何か?言葉で表現する事は非常に難しい。一つの目安としては、人間の関節に限定してみれば、その部分の可動性が関係する。人間の関節には正常な可動域というものがあり、その範囲が制限されると異常が生じる場合が多い。腰椎のどれか一つの骨の動きが悪くなっていたら、もし仮にいま腰が痛くなかったとしても、少し無理をしたり、普段とらないような変な姿勢をとったとたんにギックリ腰になってしまう可能性もある。こういう所は、もしこの患者さんが首が痛くて腰が痛くなくても、その部分は治療のサインが出ているという事になる。

もちろん、治療のサインはそれだけではない。しかしもうこれ以上言葉で言いあらわせない。どこも気になる所がなくても、定期的に治療のサインを消す事は非常に体にいいと思う。それによってより快適に、より健康に生活できることだろう。



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