湘南セーリングクラブ・ディンギーセーラー育成について
○目的
自立したヨットマンを育てるのを目的とする。
自立したヨットマンとは、自分の能力と海の状態をみて、安全に対する的確な判断が出来、多少気象条件が悪くても、思った時刻に思った場所まで安全にセーリングが出来るヨットマンをいう。下記のディンギー技術レベル中級程度のヨットマンの育成を目的とする。
(海を楽しむブルーウォーター派にしろ、レース派にしろ、上記のレベルは必要最低限である。)
○練習の心構え
各人が現在のレベルと到達目標を考え、少ない練習時間を有効に活用し、積極的にレベルアップの努力すると共に、無理をせず楽しく練習する。
(早く上達するに越したことはないが、少しづつでも上達していこう。)
○練習方法
なるべく有効に練習出来るように、9時30分着替えて集合、10時出艇、昼休みは帰らず午後2時頃着艇とする。
集合時間には事務所前に集合し、配艇、練習メニューの確認等の後、準備体操をしてから、艤装、出艇する。
準備が出来た艇から、順次出艇し、ハーバー内での着艇練習、ハーバー前での基本練習等を行い、出艇が遅れた艇によるロスを最小限にする。
他グループとの共同練習、スキッパー、クルーの相互交換等の機会を作り、技術レベルの向上を図る。
○ディンギー技術レベル
・入門
単独でのセーリングはおぼつかないが、中級以上の同乗者のもとである程度のセーリングができる。
目標は軽風下で、帆走できるようになること、バッジテスト初級合格。
・初級
バッジテスト初級程度以上。良い気象条件のもとで、思った場所まで安全にセーリングができる。基本的なルールの理解が必要。レース練習のスキッパーはこのレベル以上。
目標は順風下で、十分安全な帆走ができ、的確な判断ができるようになること、バッジテスト中級合格。
・中級
バッジテスト中級程度以上。多少気象条件が悪くても、思った時刻に思った場所まで安全にセーリングができる。自分の能力と海の状態をみて、安全に対する的確な判断ができる。レースルールの理解も必要。スキッパーとしてのレース出場はこのレベル以上。
○ディンギーカリキュラム
・入門
目標は軽風下で、帆走できるようになること、バッジテスト初級合格。
練習は座学(テキスト、ビデオ)、陸上シミュレーション、海上でのアビームコース、艇隊帆走等による、各風向きのセーリング、タック、ジャイブ等の基本練習。
初級バッジテストの実技テストの項目を参考にメニューを考える。入門者にはヨット大学(初級)の受講を義務づける。
基礎知識(座学中心)
用語、ロープワーク(エイトノット、ボーラインノット、クラブヒッチ)セーリングの基礎知識(座学中心)
風を感じる、セーリングの原理、セーリングの種類(風向き、クロース/フリー)
基本ルール(座学中心)
ポート・スターボ、上・下、クリアアヘッド・クリアアスターン
艤装(実技中心)
基本セーリング(実技中心)
ポンツーンからの出艇、着艇、波舵、クロース、タッキング、フリー、ジャイビング、インアイアンからの脱出、沈起こしの体験
・初級
目標は中風下で、十分安全な帆走ができ、的確な判断ができるようになること、バッジテスト中級合格。
練習は主に艇隊帆走等による、各風向きのベストセーリング、タック、ジャイブ等の練習、及びレース練習。
ヨット大学(中級)の受講を義務づける。
セーリングの基礎知識(座学中心)
風、セール理論、セーリングの原理、セールトリムの基本
艇のトリム(ヒール)の基本、セーリングの種類(風向き、クロース/フリー)
レースとルール(座学中心)
コース、スタート、マーク回航
基本セーリング(実技中心)
出艇、着艇、波舵、クロース、タッキング、フリー、ジャイビング、沈起こし、強風下での安全なセーリング
・中級
練習は主にレース練習。タック、ジャイブ等の基本技術練習も行う。
レースタクティクスとルール(座学中心)
セール :セール理論、セールのトリム
スタート前
コース上の風、潮等の場所、時間による分布をつかむ、スタートラインの有利なエンド
スタート
ルール、ボートコントロール(停止、波舵、後進)、ポジショニング(他艇との関係)、風下側のフリーウォーター、スタート後のコース
上マークへ
有利なコース、風のふれ、リフトの風をつかむ、ブローをつかむ、レイライン、上マーク付近での有利なコース、マーク回航、タクティクス
サイドマークへ
VMG、マークへのコース、マーク2艇身でのオーバーラップ、マーク回航
下マークへ
VMG、マークへのコース、マーク2艇身でのオーバーラップ、マーク回航、回航後のコース
フィニッシュ
有利なコース、風のふれ、リフトの風をつかむ、ブローをつかむ、レイライン、上マーク付近での有利なコース、マーク回航、タクティクス、フィニッシュラインの有利なエンド
セーリング(実技中心)
基本セーリングに加えて、ボートコントロール、ロールタック、ロールジャイブ、プレーニング、ブローへの対応、回航、レイライン、セールトリム
レースタクティクス(実技中心)
○練習メニューとその目的
・出艇準備
艇の艤装とセールのセッティング
・発着艇練習
風、自分の技術に合った発着艇方法の選択と、実地練習
・艇隊帆走(フォローザリーダ)
他艇との比較による、タック、ジャイブ、クロース、フリーの自艇の帆走技術の確認、セールのセッティング等の確認
フォローザリーダの場合は、ボートコントロール(停止、波舵、後進)
・レース練習
入門・初級者は実践的な状況での、基本ルール(ポート・スターボ、上・下、クリアアヘッド・クリアアスターン)の確認、レースとルール(コース、スタート、マーク回航)の習得
中級者はレースタクティクスとルールの実践練習、レース技術(コース、スタート、マーク回航)の技量の向上
運営補助担当者は、レース運営の基礎としての、風、安全を考慮したコース(マークの位置)設定と実際の設置、レース実施の基礎としてのスタート手順等について習得
・バッジテスト受験練習
バッジテストを想定した、帆走技術の総合練習
新入会員向けヨット講座
新入会員の皆さん向けのヨットに乗るための基礎知識です。
学生のように、ヨットに乗って身体で覚える時間が少ない、社会人は、本などからの知識を身につけ、海上での練習時間の少なさを効率を上げることで補うことが必要です。
本講座では、先ず知識として知っておくべきこと、ヨットに乗らずにできる訓練・練習を中心に下記の項目について述べます。
○安全
○衝突予防
○海上交通ルール
○ロープワーク
○風を感じる
○用語
併せて、お配りした、「ヨット 初級技術編」(松田著)に目を通してください。基本的知識はこの本に書いてあることで得られます。特に、「ヨット各部の名称」、「ロープワーク」、「海のマナーとルール」は熟読してください。「帆走の基礎知識」と「基本テクニック」はヨットの操艇の基本です。知識を身につけ、実践でなるべく早くマスターしましょう。SSCではレース練習を中心に行います。レース練習にはヨットの技術の全てが
凝縮しています。「レースの方法と楽しみ方」を読んで、早くこの練習に慣れるようにしましょう。
ヨットの用語、ヨットの各部の名称は聞き慣れない単語が多いので、しっかりと覚えてください。
私のHPにも簡単な解説がありますので参考にしてください。
ま〜ちゃんの簡単ディンギーヨット教室
Poseyのセーリング入門
ヨットに乗ったときには、この知識を確かめ、復習するつもりで乗ってください。
上記「Poseyのセーリング入門」で紹介した、パソコンで動作するヨットのシミュレータでは対話型の動画の教習で、海上交通ルールを学び、操舵、クロースホールドのセーリング、係留、着岸、衝突回避、落水救助等の訓練ができます。海上での練習の補完になります。
○安全
海上では、援助は期待できない、すべて自分で考え、自分で行動しなければなりません。したがって、初心者は経験あるベテランに助言を受けて、出艇することが必要です。
単独行動は非常に危険です。常に複数で出艇しましょう。
SSCでは、定期練習日以外の出艇は、バッジテスト中級以上のスキッパーが2艇以上で出艇することになっています。
ライフジャケットは、必ず着用します。これによって最悪の事態を免れることができます。
不運にも、「沈」をしたときには、決して艇を離れないことです。強風の時には、艇は以外に早く流されて、離れると追いつくことが難しく、大きな艇は発見されますが、艇を離れて泳いでいる人間は、非常に発見されにくくなります。
最近の事故では、沈をしたときに、体を支えるハーネス類やシート類、セール等に絡まって溺死したと思われる事故や、不意のブームの動きで頭部を打たれたための事故等が報告されています。常に、艇内の整理整頓に
心がけ、周辺状況に対する注意を怠らず、パニックに陥らない心構えが大切です。
大事に至らないまでも、小さな怪我や故障が起きないように、出艇前の艇の整備、柔軟体操、体調の自己管理を心がけましょう。
体調が悪い時や、悪くなった時には、無理をしないようにしましょう。
○衝突予防
新入会員の皆さんがティラーを握ってヨットを操縦するということは、初めて車の運転をした人が、一般公道を走るようなものです。下記の海上交通ルールをしっかりと頭に入れ、早め早めの回避行動で衝突を避けましょう。
同乗の指導者の方は、周りの艇に対して、どちらが権利艇かを下記のように質問し、確認するようにしてください。
・自艇のタックはポートタックですかスターボードタックですか?
・他艇に対して、自艇は風上ですか風下ですか?
・どちらが権利艇ですか?
他艇と自艇が近づく時、自艇から見た、他艇の見える方向が変化しなければそのままでは衝突します。周囲の艇に常に気を配るようにします。
衝突を避けるための、回避行動は、大きく、他艇から見て、回避したことがはっきりとわかるように行います。
例え、権利艇であっても、衝突をしたら、責任の一端はあります。非権利艇が、避けないようであれば、はっきりと、大きく、避けましょう。
自艇がレース中でなく、他艇がレース中の場合は権利艇であっても避けるべきです。
○海上交通ルール
ヨット(ウィンドサーフィンを含む帆船)同士が出会った場合のルール
・タックが異なる場合(ハルに対してセールのでている向きが異なる場合)
ポート・タック(左舷開き:右舷側にセールがでている状態)の艇は、スターボード・タック(右舷開き:左舷側にセールがでている状態)の艇を避けなければならない。
(常に自艇のタックを意識して、他の艇に注意しなければならない。)
・同一タックでオーバーラップしている場合(横方向に重なっている場合)
風上(セールのでている側の反対側)の艇は風下(セールのでている側)の艇を避けなければならない。
・同一タックでオーバーラップしていない場合
追い越し艇(クリア・アスターンの艇)の艇は追い越される艇(クリア・アヘッドの艇)を避けなければならない。
ルールの基本
+−−異なるタック−−−−−−−−−−−−−スターボード・タックが優先
| (ポート・スターボー)
優先権|
| +−−オーバーラップ有り−−風下優先(上・下)
+−−同一タック|
+−−オーバーラップ無し−−追い越され
(クリア・アヘッド)が優先
(追い越し・追い越され)
以上三つの大きな原則の他に
・タッキング(風上に向かいながらタックをかえること)中の艇は、他の艇を避けなければならない。
・他のヨットがレース中で、自艇がレース艇でなければ、進路を譲るべきである。進路をゆずる場合は、相手にわかるように大きく進路を変更すべきである。
・ヨットと動力船が出会った場合、動力船は帆船を避けなければならない。
しかし、大型動力船は自由が利かず、ヨットはいわゆるプレジャーボートなので、進路を譲るべきである。この場合も、進路を譲る場合は、相手にわかるように大きく進路を変更すべきである。
○ロープワーク
ヨットに必要なロープワークはたくさんありますが、下記の3種類を完全にマスターすればほとんどの場合に対応できます。
「ヨット 初級技術編」や下記HPをみて、繰り返し練習して、「正しく、いつでも、どこでも、素早く」できるようにしてください。
・エイトノット
・ボーラインノット
・クリート結び
鳥羽商船高等専門学校 結索のページ
ボーイスカウト大阪第70団
Animated Knots
Animated Knots
○風を感じる
風を感じることがセーリングでは大切です。風の向きや速度は常に変化し、また、艇速の変化によっても変化します。
風は見ることはできませんが、感じることはできます。海では旗、波等の海面の状態から強さや方向を知ることができます。陸上でも、煙や草木の揺れで知ることができます。何より、自分の顔や手の身体で風を感じることができます。
海にいるとき以外でも、常に、風を感じて、その方向や強さを、自覚するようにしましょう。
同乗の指導者の方は、時々、風の方向を質問してみてください。
真の風の風向、風速は静止した場所での風向風速です。しかし、艇が動き始めると、艇の上での風は、真の風に艇の動きが加わったものになります。これが見かけの風でです。
例えば、風のない日に車で止まっていると、窓から腕を出しても風は感じません。しかし、車が走り始めると、速度が増すにしたがって、腕に風を感じます。この風は、車の動きによる、見かけの風です。
逆に、後から、50km/hの風が吹いていると、車が止まっているときに、50km/h(約14m/s)の風を感じます。風下に向かって走り始めると、感じる風はだんだん弱くなり、車の速度が50km/hになると、まったく感じなくなり、見かけの風速は0になります
これと同じことが、艇の上でも起こります。セールは真の風と、艇の動き(艇速、セーリング方向、リーウェイ)の合わさった見かけの風に合わせて調節されます。風上に向かって走るときには、真の風に艇速が加わって、見かけの風速が増します。風下に向かって走るときには、真の風とほぼ同じ速度で走るので、真の風から艇速が引かれて、ほとんど風を感じなくなります。風上に向かって走るときには、艇速による風はバウ方向からになり、それが真の風に加わると、見かけの風は、真の風より、前側から吹くようになります。
通常、見かけの風が30°以下になると、セールは機能しなくなります。その角度は、真の風では大体45°になります。
見かけの風に関するアドバイス:
・真の風が、真っ直ぐ前か真っ直ぐ後から吹いているとき以外は、見かけの風向は、真の風向より前になる。
・真の風向が後に振れると、見かけの風の速度は小さくなる。
・真の風が後から吹いているときには、真の風向が少し変化するだけで、
見かけの風向は大きく変化する。
・見かけの風向は、ラルの中では前に移動し、ブローの中では後ろに移動する。
・艇速があがると、見かけの風向は前に移動する。
○用語
・ハル:艇体
・バウ:艇体の前部
・スターン:艇体の後部
・デッキ:艇体の上の甲板部
・センターボード:横流れ防止の板
・バウライン:艇の係留に使うロープ
・キングストン:水抜きの栓、キンチャン、キングストンコックともいう
・マスト:帆柱
・ステー:マストを支えるワイヤー
・ブーム:帆桁(帆のすそを張る支柱)
・グースネック:ブームのマストへの接続部
・ブームバング:ブームを下に引くシート
・メインセール:セールが2枚ある場合、後ろにある大きなセール
・ジブセール:セールが2枚ある場合、前にある小さなセール
・ラフ:セールの前の辺
・リーチ:セールの後ろの辺
・フット:セールの下の辺
・カニンガム:セールのラフの張り具合を調節するロープ
・アウトホール:セールのフットの張り具合を調節するロープ
・ハリヤード:セールを引き上げるロープ
・シート:セールを操るロープ
・バテン:セールの形を整えるための板
・テルテール:風見、セール等につけた糸またはテープ
・スピン:主に後ろから風を受けて走る場合に前方にあげる袋状のセール。スピネーカ
・スピンポール:スピンの風上側を張り出すためのポール
・トッピングリフト:スピンポールの高さを調節するロープ
・ガイ:スピンポールのスピン側の位置を前後に調節するロープ
・ツイーカ:ガイを引く方向を調節する装置
・ラダー:舵
・ティラー:舵棒
・エクステンション:舵棒を先につける、延長のための棒
・ブロック:ヨットで用いる滑車
・クリート:ハリヤード、シート等を固定する場所
・シャックル・ピン:U字型の金具とネジで、ハリヤード等を固定するために用いる金具
・チン(沈):ヨットが転覆すること
・かみ:風上
・しも:風下
・タック:ハルに対してセールのでている向き又はタッキングのこと
・スターボード・タック:右舷開き(左舷側にセールがでている状態)
・ポート・タック:左舷開き(右舷側にセールがでている状態)
・クルー:乗員、通常ジブセールを扱う
・スキッパー:艇長、通常メインセールとラダーを扱う
・ヒール:艇が傾くこと、ヨットは通常やや傾いて走る
・ハイキングアウト:正しいヒールに保つため、体をのり出すこと
・シバー:セールがバタバタすること
・タッキング:風上に向かいながらタックをかえること。タック
・ジャイビング:風下に向かいながらタックをかえること。ジャイブ
・ラフィング:風上に向きを変えること、ラフするともいう
・ベアリング・アウェイ:風下に向きを変えること、ベアするともいう
○おまけ
ヨットの話しは定性的、定量的値は艇、セール、コンディション、等によって変わるので難しい。ベストスピードでセーリングできるように、自分で工夫する必要がある。
・基本セーリング
+―――――+――――――+―――――――+――――― |ヒール |シート |ティラー |センター ―――――+―――――+――――――+―――――――+――――― クロース |ヒール |引く |風に合わせる |下げる ―――――+―――――+――――――+―――――――+――――― アビーム |フラット |風に合わせる|艇を真っ直ぐに|半分上げる ―――――+―――――+――――――+―――――――+――――― ランニング|アンヒール|出す |風に合わせる |2/3上げる ―――――+―――――+――――――+―――――――+―――――・セールトリムの基本
セールを深く<>セールを浅く +―――+――+――+ |弱風 |中風|強風| ――――――+―――+――+――+ シート |弱 |強 |強 | >マストベンド、セールが浅く ――――――+―――+――+――+ カニンガム |ルーズ|弱 |強 | >アールが前に ――――――+―――+――+――+ アウトホール|弱 |弱 |強 | >セールが浅く ――――――+―――+――+――+ ブームバング|ルーズ|強 |強 | >マストベンド、セールが浅く ――――――+―――+――+――+ トラベラー |弱 |強 |強 | >セールが浅く ――――――+―――+――+――+