繊細であり大胆


”繊細であり大胆”。これが僕が日頃心掛けている事だ。これは、以前勤めていた治療院の院長から似たような事を言われたが、今でもこれが一番大切であると思っている。

僕の治療は、以前に述べたように、時には5g位の圧しか使わない場合もある。最初は、こんな強さで効果があるのか?と思われる方もいらっしゃるが、力の方向と角度などがぴったり合うと、その5gの圧はとんでもないエネルギ−を生み出す。そのためには、コンマ何ミリかの微妙な力の加減が必要になってくる。

たまに、「先生はただ触っているだけみたいなので、女房が肩が凝ると言っていた時に真似してやってみたが、全然変わらなかった」なんて言われた事があるが、それは当たり前である。受けている方はただ触られてる感じしかしないかも知れないが、こちらは指先に目が付いているかの如く意識を集中し、微妙な感覚を頼りに針穴に糸を通すような感じで一つ一つ調整しているのだ。患者さんからは見えないが、背中には汗が流れ、神経をすり減らし、全身全霊で取り組んでいる。

治療に対しては、まずそのような繊細さが一番大切だと思う。大雑把、いい加減な事は許されない。しかし、慎重になりすぎてもいけない。時には大胆にならなくてはいけない場合もある。

以前に、坐骨神経痛の方で、何回か治療してもまたしばらくすると出てきてしまう方がいた。その方は非常に敏感だったので、特に注意深くやっていた。なるべく強い刺激を避け、よりソフトな刺激を与えていた。それで効果はあったのだが、あまり治療効果が持続しない。そこで、ある時思い切って、ズレている骨を強い力で押し込んでみた。ポコッとソケットがはまるような感じがした。こんなにきれいに骨が入る感覚は始めてだった。それ以来、坐骨神経痛は出ていない。

時にはこういう荒治療でうまくいく場合もあるが、下手をすれば悪化する可能性もあった。始めからこういう治療をしてもおそらくダメだったであろう。何回か治療して、お互い信頼関係が出来ていたのでうまくいったと思う。時にはこういう大胆さも必要だと考えている。

このように、いろんなケ−スがある。どのように判断するか?それは言葉では言えない、手の感覚と経験であろう。毎日患者さんを治療して、そこからいろんな事を経験し、学ぶ。こういう積み重ねでより良い治療家になっていくものだと思う。これからも”繊細であり大胆”という事を基本にがんばりやいと思っている。



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