初めてレース参加のセーラーへルールの解説とレースの実際


Toto江ノ島トレーニングレース『初心者へのレースマニアル』

作成:神奈川県セーリング連盟


ヨットレースといっても、オリンピックやアメリカズカップ、各艇種の世界選手権、全日本選手権から、ハーバーやマリーナで週末に行われるクラブレース、また各艇種が一緒に参加するオープンレース等々、ピンからキリまで沢山あります。

ここでは、KSAFが行っているトレーニングレースに参加することが、初めてのレース体験?の方達を対象としたレースの初歩的な説明です。


『レースへの申込み』

 一般的なレースの参加手続きは、次の通りです。


◆ レースに必要な書類


1.   レースの公示(大会主催者から実施要綱として示されます)
「含まれる内容」
(1)レースの名称、場所、期日、主催団体
(2)レースに適用されるセーリング規則およびその他の文章
(3)レースのクラス(艇種)と参加申込みの条件や制限
(4)申込みの期日およびレースの開始する時刻(最初のレースの予告信号時刻)
(5)その他の事項として
広告のカテゴリー、事前登録や申込み参加費の手順、参加申込書、計測の有無や計測証明書の提出要求、走指示書の配布時と場所、  競技規則の変更の有無、レースコース、レース成立に必要な最低レースの数などです。

 実施要綱
に基づいてレース申込みを行うと、帆走指示書を手にします。

2. 
  
帆走指示書に含まれる内容 一部は実施要綱と重複します。
(1)     レース日程
(2)     適用規則
(3)     コースや使用されるマークについての記述
(4)     スタート、フィニッシュにおける特別な信号(クラス旗等の記述)
(5)     レースのタイムリミットについて
(6)     その他 出艇、帰着の時の申告方法  等々

通常はレース当日に会場で開会式ブリーフィング(スキッパーズミーティング)があり、レース詳細についての説明を受けます。その後にレース海面へ行くことになります(ハーバーからの出港にも、信号旗と音声で指示があることもあります)


◆ トレーニングレースでは


KSAF(神奈川県セーリング連盟)で実施するトレーニングレースは「レース形式の練習」と考えてください。従って、実施要綱や帆走指示書の配布や、一々エントリー申込みを受け付けることもありません。またレース前のスキパーズミーティングもありません。

帆走指示書と実施要綱は、このHPに記載してある通りです。

1.    トレーニングレースへの参加

2001年、2002年と、海上で自由エントリーとしていました。2003年は少し形式を変えたいと考えています。このレースは1年間8回から12回実施で、各5〜7レース程度行いたいと計画しています。トータルでのポイントでの表彰や、同一艇種をまとめた練習レースなど、新たな試みを考えています。参加するメンバーを出来るだけ把握したいと考え年間を通しての登録をお願いする予定です。2人乗りが5000円、1人乗りが3000円の登録料で、ステッカーを配布しますので、艇のバウかスターンの見えるところに貼ってください。(申込みは江ノ島事務所かメールで受け付けます) トレーニングレース登録メンバーに対する特典も考慮中です。また、今までどおりの自由エントリー制度も残していきたいと考えています。

2.         レース海面  

レース海面(江ノ島A、
B海面又は稲村ヶ崎・鎌倉沖海面)で1030分からスタートです。(30分程度のレースを繰り返し実施します)


◆ レースの具体的な解説


1.  レースのコース

トレーニングレースで使うコースHPで示してあるように、スタート→上マーク→サイドマーク→下マーク→上マーク→下マーク→フィニッシュライン(下マークとスタートのアウターは兼用です)

少数の運営艇と運営メンバーで行うために少し変ったコースです。一般に使われるコースは「レースコースについて」を参照してください。レースコース1、 レースコース2レースコースの比較 )

トレーニングレースのコースを簡単に述べると、“「トライアングル1回」で次が「ソーセージ」で下フィニッシュ”の様な表現になります。

2.   スタートラインと回航マーク

(1) スタートラインは、運営ボートのオレンジ旗の掲揚されているポールアウターマーク(又は同じようなオレンジ旗を掲揚した運営ボート)の間です。
(2) スタートラインは風向に対して直角に設定されます。
(3) 上マークは出来るだけ正確に風上へ設置されます。従って、運営側ではレーススタート開始に出来るだけ近い時間まで風向(風軸)を測り、スタート時に上マークが正しく真上にあり、スタートラインが風軸に直角に設定されているように努めます。

実際のレースのルールが適用されるのは、スタート時刻の4分前(準備信号旗掲揚後)ですから、それまでにスタートライン(エンドマーク)が設置され、上マークとサイドマークが設置されます。

トレーニングレースの場合、運営は本部船(スタート位置に停泊)とマークボートの2隻で行われることが多いので、スタートラインのアウターマークを設置後、マークボートが上に移動し、上マーク設置、続いてサイドマークを設置しています。


スタートラインの正確な位置は、本部船の「オレンジ旗を掲げたポールとアウターマークの風上側を結ぶ線です。これより風上に艇の一部でもスタート時間に出ていればリコールとなります。

 これからレースの実際についての説明です。本格的にレースを行う場合、日本セーリング連盟で発売しているルールブック「セーリング競技規則2001-2004(RRS)」を読むことが必要です(江ノ島では、白羊照会で販売)。また、色々なレース解説書も発行されています。ここでは、トレーニングレース参加者に、まずレースの知識として説明を行います。

『スタートまで』

1.スタートの手順
スタート時間は最初は帆走指示書により決められています。トレーニングレースでは、1030分です。スタート5分前に「予告信号」としてクラス旗が掲揚(音声1発)、4分前に「準備信号」としてP旗又はI旗が掲揚(音声1発)、1分前にP旗又はI旗降下(音声1発)、スタート時刻にクラス旗降下(音声1発)でスタートになります。

◆“スタート前にラインの風上側に出た場合” → リコール(再スタート)の扱いになります。(リコールの旗)
◆リコール艇があった場合、スタート後にX旗(音声1発)が掲揚されます。
◆多くの艇がリコールしていて、運営側でリコール艇の特定が出来ない場合は、ゼネラルリコールとして、さらに音声1発とともに第一代表旗が掲揚されます。従って、リコールの場合、スタートの音声1発の後に1発、ゼネラルリコールの場合2発なることになります。(ゼネラルリコールの旗)

準備信号とは  → ここからレースになる (レースルールはこれから適用になります)

準備信号として、P旗又はI旗と書かれていますが、この違いについて説明します。

● P旗の場合 リコールの解消方法
通常のスタート手順になります。すなわちリコールした艇は、スタートラインの内側(風下側)へ艇全体を戻してから、再度スタートラインを横切ることで正規のスタートになります。

● I旗の場合 リコールの解消方法
I旗が降下されるスタート1分前に、艇の一部でもスタートラインの風上側にいる艇は、スタート時刻までにラインの内側に戻ってもリコールは解消されません。この場合、スタートラインの両端のどちらからかを廻りラインの内側に戻ってからスタートラインからスタートすることでリコールが解消されます。

 I旗ではスタートラインの中央付近でリコールした場合、リコール解消に非常に時間がかかり不利になります。艇数が多く、スタートでのゼネラルリコールが繰り返されるような場合は運営側ではI旗掲揚を選択します。また、最初はP旗で、ゼネラルリコール後はI旗を使うなどの運用方法があります。

◆ゼネラルリコール
多数のリコール艇がいる場合、ゼネラルリコールとして、レースをやり直しにします。この場合、スタートした艇がスタートラインに戻る状況を見て、第一代表旗を降下します(音声1発)。第一代表旗降下1分後に、予告信号を掲揚し通常のスタート手順になります。

ゼネラルリコール後に第一代表旗を降下させるのは状況にもよりますが、5分間隔のスタート手順が時計の記録などで使いやすいので、4分後に降下することが多いです。従って、ゼネラルリコールと認識したら、早急にスタートラインに戻りましょう。

◆レース延期の場合
 スタート時間になっても、風軸が定まらないとか、風が無くマークの設定が出来ない、予告信号を掲揚したが、突然風向が大幅に変化したなどの場合、一旦レースの延期を行うことがあります。延期にはAP旗を掲揚(音声2発)します。AP旗が掲揚されている間はレースは行われません。AP旗降下(音声1発)して1分後に予告信号が掲揚され、スタート手順が開始します。

◆次のレース
 最初のレース開始時刻は決められていますが、次のレース開始は帆走指示書では「引き続き実施する」と記載されている場合が大半です。したがって、レース運営本部船の傍に何時もいるようにしましょう。しかしながら急に予告信号を出されては自分の時計のスイッチを入れる機会を失います。運営側から選手に前もって知らせる手段として、L旗「声の届く範囲まで来い」を掲揚し、それを下ろしてから1分後に予告信号を発っします。

◆レース中のルール
 レースにおいてのルールは、まずヨットの衝突を防止することが第一義的に決められています。優先権の3つのルール(「ポート・スターボード」、「上下」、「追越し・追越され」)の他に、スタート時、マークの回航時に優先権についてのルースが存在します。

これらは「ルールブック(RSS)」やルールの解説書で勉強してください。

(1)   最初にレースに出る時には、ベテランのクルーに乗ってもらうとか、ベテランの艇のクルーを体験させてもらうなど、OJTでの体験も有効です。

(2)    シングルハンド艇の場合は、自分でルールを勉強しながら、初めのうちは、安全第一で他の艇との接触を避けることに注意を払いながら、レース経験を増していくことが良いと思います。

◆レース中のペナルティー
 ルールに違反したり、衝突などの重大な損傷を発生させた場合は失格となります。ただし、軽微な違反は自分でペナルティーを実行することで解消することが出来ます。

(1) マークへの接触
マークを回りなおすか、接触したマークと次のマークの間のコースで1回転(360度)の回転を実施する。回転は他の艇を避けた場所で行い、また速やかに行うこと。

(2) 航路権の違反
優先権を違反して、優先権を持つ艇に自艇を避けさせた場合、速やかに2回(720度)の回転を行うこと。

◆フィニッシュ
 正規のコースでフィニッシュする場合は、フィニッシュボートには青旗が掲揚されています。フィニッシュラインはボートとマークあるいはボート同士の間ですが、フィニッシュの前に回航したマークの方向からフィニッシュラインに入ります。アンカーを打って停泊しているボートが、風向が変わったり、潮の流れで必ずしもコースに直角に設定されているとは限りません。

◆コース短縮の場合のフィニッシュ
 まさに回航しようとしているマークとS旗を揚げた運営艇の間を、回航してきたマークの方向から入ります。S旗掲揚は音声2発です。

◆その他のレース中の信号


コース変更
回航するマークの傍の運営艇からC旗が連続音とともに掲揚されます。回航後のマーク位置が打ちかえられ変更されます。レースによって、新しいマークの方位が表示されることもあります。またC旗と共にグリーン旗の場合は元のマークから右側へ、赤旗の場合は左側に新しいマークが設置されていることを示します。

N旗:スタートしたレースを中止する。直ちにスタートエリアに戻れ。
N旗()+H旗(下):すべてのレースは中止、陸上へ戻れ。
N()+A旗():レースは中止。本日終了。
AP旗:スタートしていないレースの延期。
AP旗()+H旗() スタートしていないレースは延期。陸上へ戻れ。
AP旗()+A旗():スタートしていないレースは延期。本日終了。

N旗とAP旗は同じような意味に見えますが、両方の旗の意味の違いは、レーススタート前にはAP旗、スタート後はN旗が使用されます。

安全とマナー
 レースの参加、またレースの中止の決定は、各参加艇が自らの責任で決定するものです。AP旗やN旗を使ってのレース中止は運営側での判断ですが、初心者の場合、運営側ではレース続行に問題ないと思っている風域でも既に自分の限界を超えてしまうことも考えられます。天候の予測を常に行い、早め早めにレースを中止してリタイアする決断をすることも大切です。リタイアして港に戻る時は、運営艇や傍にいる艇にリタイアすることを注げて下さい。トレーニングレースにおいても、運営艇はスタート艇数を確認し、沈をして沖に流された艇がいないか、陸上岩場に吹き寄せられる艇の有無を監視しています。

沈で艇が起せない場合とか、艇の破損等でセーリング不能など、レスキューが必要な場合も、運営艇にわかるように合図をして下さい。江ノ島海域の場合、少ない運営艇で実施していますが、ハーバーの救助連絡網により、救助艇の応援を要請することが出来ます

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