これからレースの実際についての説明です。本格的にレースを行う場合、日本セーリング連盟で発売しているルールブック「セーリング競技規則2001-2004(RRS)」を読むことが必要です(江ノ島では、白羊照会で販売)。また、色々なレース解説書も発行されています。ここでは、トレーニングレース参加者に、まずレースの知識として説明を行います。
『スタートまで』
1.スタートの手順
スタート時間は最初は帆走指示書により決められています。トレーニングレースでは、10時30分です。スタート5分前に「予告信号」としてクラス旗が掲揚(音声1発)、4分前に「準備信号」としてP旗又はI旗が掲揚(音声1発)、1分前にP旗又はI旗降下(音声1発)、スタート時刻にクラス旗降下(音声1発)でスタートになります。
◆“スタート前にラインの風上側に出た場合” → リコール(再スタート)の扱いになります。(リコールの旗)
◆リコール艇があった場合、スタート後にX旗(音声1発)が掲揚されます。
◆多くの艇がリコールしていて、運営側でリコール艇の特定が出来ない場合は、ゼネラルリコールとして、さらに音声1発とともに第一代表旗が掲揚されます。従って、リコールの場合、スタートの音声1発の後に1発、ゼネラルリコールの場合2発なることになります。(ゼネラルリコールの旗)
◆準備信号とは → ここからレースになる (レースルールはこれから適用になります)
準備信号として、P旗又はI旗と書かれていますが、この違いについて説明します。
● P旗の場合 リコールの解消方法
通常のスタート手順になります。すなわちリコールした艇は、スタートラインの内側(風下側)へ艇全体を戻してから、再度スタートラインを横切ることで正規のスタートになります。
● I旗の場合 リコールの解消方法
I旗が降下されるスタート1分前に、艇の一部でもスタートラインの風上側にいる艇は、スタート時刻までにラインの内側に戻ってもリコールは解消されません。この場合、スタートラインの両端のどちらからかを廻りラインの内側に戻ってからスタートラインからスタートすることでリコールが解消されます。
I旗ではスタートラインの中央付近でリコールした場合、リコール解消に非常に時間がかかり不利になります。艇数が多く、スタートでのゼネラルリコールが繰り返されるような場合は運営側ではI旗掲揚を選択します。また、最初はP旗で、ゼネラルリコール後はI旗を使うなどの運用方法があります。
◆ゼネラルリコール
多数のリコール艇がいる場合、ゼネラルリコールとして、レースをやり直しにします。この場合、スタートした艇がスタートラインに戻る状況を見て、第一代表旗を降下します(音声1発)。第一代表旗降下1分後に、予告信号を掲揚し通常のスタート手順になります。
ゼネラルリコール後に第一代表旗を降下させるのは状況にもよりますが、5分間隔のスタート手順が時計の記録などで使いやすいので、4分後に降下することが多いです。従って、ゼネラルリコールと認識したら、早急にスタートラインに戻りましょう。
◆レース延期の場合
スタート時間になっても、風軸が定まらないとか、風が無くマークの設定が出来ない、予告信号を掲揚したが、突然風向が大幅に変化したなどの場合、一旦レースの延期を行うことがあります。延期にはAP旗を掲揚(音声2発)します。AP旗が掲揚されている間はレースは行われません。AP旗降下(音声1発)して1分後に予告信号が掲揚され、スタート手順が開始します。
◆次のレース
最初のレース開始時刻は決められていますが、次のレース開始は帆走指示書では「引き続き実施する」と記載されている場合が大半です。したがって、レース運営本部船の傍に何時もいるようにしましょう。しかしながら急に予告信号を出されては自分の時計のスイッチを入れる機会を失います。運営側から選手に前もって知らせる手段として、L旗「声の届く範囲まで来い」を掲揚し、それを下ろしてから1分後に予告信号を発っします。
◆レース中のルール
レースにおいてのルールは、まずヨットの衝突を防止することが第一義的に決められています。優先権の3つのルール(「ポート・スターボード」、「上下」、「追越し・追越され」)の他に、スタート時、マークの回航時に優先権についてのルースが存在します。
これらは「ルールブック(RSS)」やルールの解説書で勉強してください。
(1) 最初にレースに出る時には、ベテランのクルーに乗ってもらうとか、ベテランの艇のクルーを体験させてもらうなど、OJTでの体験も有効です。
(2) シングルハンド艇の場合は、自分でルールを勉強しながら、初めのうちは、安全第一で他の艇との接触を避けることに注意を払いながら、レース経験を増していくことが良いと思います。
◆レース中のペナルティー
ルールに違反したり、衝突などの重大な損傷を発生させた場合は失格となります。ただし、軽微な違反は自分でペナルティーを実行することで解消することが出来ます。
(1) マークへの接触
マークを回りなおすか、接触したマークと次のマークの間のコースで1回転(360度)の回転を実施する。回転は他の艇を避けた場所で行い、また速やかに行うこと。
(2) 航路権の違反
優先権を違反して、優先権を持つ艇に自艇を避けさせた場合、速やかに2回(720度)の回転を行うこと。
◆フィニッシュ
正規のコースでフィニッシュする場合は、フィニッシュボートには青旗が掲揚されています。フィニッシュラインはボートとマークあるいはボート同士の間ですが、フィニッシュの前に回航したマークの方向からフィニッシュラインに入ります。アンカーを打って停泊しているボートが、風向が変わったり、潮の流れで必ずしもコースに直角に設定されているとは限りません。
◆コース短縮の場合のフィニッシュ
まさに回航しようとしているマークとS旗を揚げた運営艇の間を、回航してきたマークの方向から入ります。S旗掲揚は音声2発です。
◆その他のレース中の信号
コース変更
回航するマークの傍の運営艇からC旗が連続音とともに掲揚されます。回航後のマーク位置が打ちかえられ変更されます。レースによって、新しいマークの方位が表示されることもあります。またC旗と共にグリーン旗の場合は元のマークから右側へ、赤旗の場合は左側に新しいマークが設置されていることを示します。
N旗:スタートしたレースを中止する。直ちにスタートエリアに戻れ。
N旗(上)+H旗(下):すべてのレースは中止、陸上へ戻れ。
N旗(上)+A旗(下):レースは中止。本日終了。
AP旗:スタートしていないレースの延期。
AP旗(上)+H旗(下): スタートしていないレースは延期。陸上へ戻れ。
AP旗(上)+A旗(下):スタートしていないレースは延期。本日終了。
N旗とAP旗は同じような意味に見えますが、両方の旗の意味の違いは、レーススタート前にはAP旗、スタート後はN旗が使用されます。 ◆安全とマナー
レースの参加、またレースの中止の決定は、各参加艇が自らの責任で決定するものです。AP旗やN旗を使ってのレース中止は運営側での判断ですが、初心者の場合、運営側ではレース続行に問題ないと思っている風域でも既に自分の限界を超えてしまうことも考えられます。天候の予測を常に行い、早め早めにレースを中止してリタイアする決断をすることも大切です。リタイアして港に戻る時は、運営艇や傍にいる艇にリタイアすることを注げて下さい。トレーニングレースにおいても、運営艇はスタート艇数を確認し、沈をして沖に流された艇がいないか、陸上岩場に吹き寄せられる艇の有無を監視しています。 |