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強力粉から分離したでん粉を水に分散させて光学顕微鏡で見る。 赤色に染色された粒子は損傷でん粉*。 (懸濁液には、損傷でん粉を選択的に染色する色素が添加されている) でん粉粒の大きさは、小粒子〜大粒子(20〜40μ=0.02〜0.04ミリメートル )が殆どで、中間的なサイズは少ない。 赤色に染色された損傷でん粉の中には50μを上回るような大きなものが見られるが、これは水を吸い込んで膨らんだもので本来のサイズではない。 損傷でん粉は製粉時の機械的作用で生ずるもので、小麦粉の吸水力を増加させる |
A: 損傷の少ないでん粉粒 B:損傷でん粉粒 C: 皮部に近い胚乳片(小粒子でん粉粒を多く含む) | |
通 常 光 |
偏 光 |
コムギ粉(強力粉)を、損傷でん粉を選択的に染色する色素を添加した水に分散させ、通常の可視光線による透過照明で撮影。 A: 健全なでん粉粒。染色されていない。 B に較べて形が小さい。>
B: 損傷でん粉粒と見なされる。異常に大きく、且つ染色されている。
C: 皮部に近い部分の胚乳片。多数の小粒子でん粉が認められる。 |
左と全く同じ視野、照明だけを偏光に変えて撮影。・・・左と同じ顕微鏡に、偏光フィルターをセットしただけのもの。 A: 結晶体に特有の偏光像(この場合は十字像)を示した。 B: 偏光十字像を示さない。 C: 皮部に近い部分の胚乳片。 小粒子でん粉の多くは偏光照明で輝いて見え、損傷でん粉ではなく殆どは健全なでん粉と見なされる。 一般に損傷でん粉は大粒でん粉に生じやすく、小粒でん粉には殆ど認められない。 尚、皮部に近い部分に分布するでん粉には小粒子が多い。 |
コムギでん粉粒は同心球状の層状構造をしているとされている。 |
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この図は、上の ”コムギでん粉の光学顕微鏡写真 (その2)” の 通常光 の写真から切り抜いたもの。 同心円状の模様があるので、内部は均一ではなく何か円形あるいは球状の構造の存在が示唆される。しかし、これだけでは内部の立体的な構造の細部は分からない。 微小なでん粉粒を解剖して内部を見るのは困難だが、コムギ種子を発芽させると、貯蔵でん粉粒は自己消化して溶解、内部が露出してくるので観察に便利である。(下の写真)。 |
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発芽により組織が溶け内部構造が露出した でん粉粒
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さて、中心部には塊状の部分がある。 これは層状の組織が壊れた残骸ではなく、でん粉粒形成の中核となる部分ではあるまいか?本稿では臍(Hilum へそ)と言ったこともあるが・・・違うもののようだ。(注) コムギ種子が熟するにつれて、でん粉粒ではこの中核を取り囲むようにでん粉分子が並び、同心球状の層状組織が形成されて行く。 この同心球状の層状構造により、でん粉粒は結晶性を持ち、特有の偏光像を出現させるのであろう。 損傷でん粉*の場合は層の間に水が浸入して粒子の膨潤や結晶性のの喪失などが起こる。 同心球状の層状組織が出来るのは「昼間に光合成で生じた糖が夜間、種子部に移動し夜間でのみ、でん粉が合成される」ことの繰り返しによると考えられている。 (注)写真では、層状組織に比べて塊状部分の分解が進んでいないように見える。 この塊状部分は、でん粉粒生成の中核となり、発芽時には分解が遅いとなれば、他の例えば層状組織のでん粉と比べ何か違った特徴がありそうだ。 例えば、でん粉の分子構造(アミロースとアミロペクチン含有比率)、糊化時の温度と粘度の関係、酵素分解への耐性など。 |
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コムギ種子は発芽の際、でん粉は水分の存在下、酵素の作用により消化され発芽と生長のためのエネルギーとなる。並行的に、たん白質など他の成分も酵素により分解される。 発芽に伴いコムギ種子の酵素活性が強くなっている。発芽コムギが原料コムギ中に混入すると、二次加工時に他の健全なコムギ粉の成分をも分解し二次加工性を劣化させる。 コムギは登熟時に雨に濡れると穂に付いたままで発芽し(穂発芽)、後で乾燥しても強くなった酵素活性は元に戻らない。雨濡れによる酵素活性の増加は、見た目では芽が出ていなくても進んでいるので油断がならない。 |
馬鈴薯でん粉および玉蜀黍(とうもろこし)でん粉はいずれも
偏光十字像を示した。 コムギでん粉の一部に見られるような、偏光十字像を喪失した損傷でん粉粒は見出せなかった。(注)
(注) 馬鈴薯でん粉および玉蜀黍でん粉で偏光十字像を喪失した損傷でん粉が発見できなかった理由は、両でん粉の製造工程ではコムギ製粉のような強い機械的作用を受けないため。 |
馬鈴薯でん粉 |
玉蜀黍(とうもろこし)でん粉 |
** オーストアリア産コムギASWは、うどん用に向いているとされるが、原因は、でん粉だけではなくグルテンも忘れてはならない。 参 考 コムギ粉生地の物理性測定について 別のページで説明 |