山影冬彦の漱石異説な世界・本篇
  2、漱石異説連作本の紹介


既刊5冊、近刊1冊の一覧紹介
漱石異説二題 漱石異説『こゝろ』反証 漱石異説『坊つちやん』見落
副題…『坊つちやん』抱腹
     『道草』徘徊
彩流社 /1994年3月刊
202頁/2000円/在庫有
副題…なし

武蔵野書房/1995年2月刊
210頁/2000円/在庫無
副題…『漱石研究』落選集

武蔵野書房/1998年7月刊
186頁/2100円/在庫有

漱石異説『坊つちやん』連想 漱石異説『坊つちやん』練想 漱石異説四角四面論
副題… 多田薬師炙り出し

武蔵野書房/2003年5月刊
416頁/2100円/在庫有
副題…指導力不足教員
    としての坊つちやん
文芸社/2005年5月刊
163頁/1470円/在庫有
副題…『坊つちやん』『道草』
『文学論』 『私の個人主義』
出版社未定/200X年X月刊
頁数価格未定


既刊本の注文方法
一般書店から注文できます。その際、書名と出版社名を告げ、著者名は省いて下さい。著者名は山影冬彦と一致しない場合があります。不明な点は各出版社に問い合わせて下さい。
彩流社 〒102-0071 千代田区富士見 2-2-2
  03-3234-5931 
         http://www.sairyuusha.co.jp/
文芸社 〒160-0022  新宿区新宿 1-10-1
03-5369-2299                           http://www.bungeisha.co.jp/index.php   
武蔵野書房 〒185-0011  国分寺市本多2-9-8   042-326-0201




解説と目次列挙による個別紹介


漱石異説二題 …『坊つちやん』 抱腹・『道草』徘徊/彩流社/1994年3月刊
◆漱石異説シリーズの第一作目。本書は第一題の『坊つちやん』論と第二題の『道草』論の合本。
◆第一題の『坊つちやん』論は、多田の満仲=只の饅頭という洒落の歴史的用例を検証しながら、漱石の『文学論』での「無意識的洒落」理論を手がかりにして、坊つちやんを自覚なき道化と性格づける。
◆第二題の『道草』論は、「異様な熱塊」をもって「遠い所から帰って来た」主人公が漱石その人であり、物語は日常の雑事に煩わされながら学者から作家への転身に逡巡して道草を食っている姿を描いたもので、『道草』という題意もそこに見る。
◆両論は一見無関係のように見えながら、なかなかどうして。後に紹介するように、本書の続編として、『漱石異説四角四面論…『坊つちやん』『道草』『文学論』『私の個人主義』』の刊行を構想しつつある。
    [目次の列挙]

◆第一題『坊つちやん』抱腹◆
  一、タダのマンジュウ論・本論 (多田の満仲=只の饅頭という洒落の歴史的検証)
   二、タダのマンジュウ論・傍証 (『坊つちやん』本文での他の洒落の用例を検証)
   三、作者夏目漱石の意図 (『文学論』にいう「無意識的洒落」理論の紹介)
   四、自覚なき道化 (山口昌男『道化の民俗学』の援用で主人公=自覚なき道化説を展開)
   五、読み落としの現状 (多田の満仲に関するルビ・注・英訳等の問題点の指摘)

◆第二題『道草』徘徊◆
   一、徘徊の行程
   二、『道草』に則して (主題は何か、『道草』は自伝か、鍵言葉は何か、等)
   三、狩野亨吉宛漱石書簡に沿って (鈴木三重吉宛漱石書簡、「『文学論』序」等)
   四、「『坑夫』の作意と自然派伝奇派の交渉」に沿って (『道草』の小説としての方法、等)
   五、補論 (「『文学論』序」の成立事情、漱石の『破戒』批判、等)

         先頭へ戻る   


漱石異説『こゝろ』反証            /武蔵野書房/1995年2月刊/在庫なし
漱石異説シリーズの第二作目。
◆『こゝろ』は高校国語の教材としてよく使用され、『坊つちやん』とともに漱石の代表作とみなされる。
◆物語の結末で自殺する主人公の先生は、その理由を「明治の精神への殉死」だとしているが、この自殺理由が真っ赤な嘘だとするのが本書の主張。
◆高校国語の授業では絶対に教えてくれない新解釈。
◆衝撃的なもの言いがうけてか、本書は刊行後しばらくして品切れ。
◆本書にはやや堅苦しい記述があり、また、補うべき論点もあるので、本書を高校生向けに問答形式に変形して増補改訂版の形で再版することを構想中。この企画は2005年の早い時期に実現できるよう準備。
 →資料篇「5、新刊情報」
    [目次の列挙]

◆第一章『こゝろ』の証言◆
   一、問題の所在
   二、『こゝろ』の三部構成
   三、『こゝろ』の謎を解く鍵言葉
   四、「適当の時機」の二重性
   五、「先生」にとっての「適当の時機」
   六、「私」にとっての「適当の時機」
   七、合体「適当の時機」が『こゝろ』の謎を解く
   八、検証・松元説

◆第二章『こゝろ』の偽証◆
   一、「明治の精神」とは何か
   二、並立? 二つの自裁理由
   三、「先生」自裁の障害物
   四、力量測定・「明治の精神」
   五、力量測定・「私」
   六、「先生」の偽証
   七、『こゝろ』の整理……結ばれ方の問題
   八、「私」の問題

◆第三章『こゝろ』の主題……漱石とポオ、埴谷雄高を媒介にして……◆
   一、作者漱石の動機
   二、ポオ、埴谷雄高の調べ
   三、漱石式「私の心を発く」
   四、『こゝろ』の主題
   五、まとめ
    

          


漱石異説『坊つちやん』見落  …『漱石研究』落選集/武蔵野書房/1998年7月
◆漱石異説シリーズの第三作目。
◆副題通り、『漱石研究』という研究誌に投稿して没になった稿の寄せ集め。
◆『漱石研究』誌の編集者は小森陽一・石原千秋という新進気鋭の漱石研究者。
◆その12号で『坊つちやん』を特集し、原稿を募集するというので、その気になって数稿を作成して投稿してみたが、全て没。
◆5つも原稿送付で、心証を害したかも。
◆落選の理由は『漱石研究』誌の研究水準に達しなかったからに違いないが、研究者の「見落」を指摘したが故に「落選」したというふうに、オチをつけて珍解釈。
◆落選は予想のうち。同誌『坊つちやん』特集号がでる前に本書を出版。
◆贅も沢  気散じ出版  落ち原稿
◆好きな漱石句「長けれど 何の糸瓜と さがりけり」をもじれば、
◆落ちたれど 何の糸瓜と ぶらさがり
    [目次の列挙]

◆まえがき……落ち二題◆
     その一、多田の満仲・只の饅頭拾遺    その二、落選報告
◆第一章 『坊つちやん』と『田舎源氏』◆
         ( 川柳の謎句「百姓も元は清和の流れなり」の答え『偐紫田舎源氏』を用いて
          坊つちやんの身分意識にオチをつけたもの )
◆第二章 『坊つちやん』と多田の満仲◆
      ( 小谷野敦『夏目漱石を江戸から読む』をとりあげ
             その多田の満仲理解の見落を指摘したもの )
◆第三章 『坊つちやん』と子規◆
      ( 松井利彦『子規と漱石』をとりあげ
       その漱石身分意識説の誤認を指摘したもの )
◆第四章 『坊つちやん』と「貴種」◆
          ( 石井和夫「貴種流離譚のパロディ 『坊つちやん』…差別する漱石」をとりあげ
            漱石に差別意識ありとする議論に疑念を呈したもの )
◆第五章 『坊つちやん』と平岡説(一)◆
         ( 平岡敏夫「「坊っちゃん」式論  小日向の養源寺」をとりあげ
          その『坊つちやん』悲劇視の論拠への疑問を指摘したもの )
◆第六章 『坊つちやん』と平岡説(二)◆
      (  第五章に続いて平岡敏夫論文をとりあげ
         漱石『文学論」にいう「仮対法」を紹介したもの )
◆第七章 『坊つちやん』と平岡説以後◆
          ( 有光隆司「『坊つちやん』の構造 悲劇の方法について」をとりあげ
            その構造理解への疑念を呈しつつ作品に則した読みを提唱したもの )

       


漱石異説『坊つちやん』連想…多田薬師炙り出し/武蔵野書房/2003年5月刊
◆漱石異説シリーズの第四作目。
◆相変わらずの『坊つちやん』論だが、本書の主題は多田の満仲からの連想としての多田の薬師。
◆この寺は隅田川沿いにあった古刹で、その炙り出しによって『坊つちやん』には隅田川沿岸の江戸下町情緒が漂っていることを明示。
◆浮世絵師の葛飾北斎も絡む。
◆日本独特の井戸掘り技術としての上総掘りにも言及。実に『坊つちやん』の中に上総掘り井戸の描写があった。
◆坊つちやんが数学の授業でベランメエ調でまくし立てた事件についても注目。
◆本書には付録が盛り沢山。その一つの「不承知「指導力不足教員」物語」などは奇怪な話で、次作の『漱石異説『坊つちやん』連想2 指導力不足教員としての坊つちやん』へのきっかけを提供。
    [目次の列挙]

  第一章 連想二筋……音から饅頭・意義から薬師
  第二章 音から連想……多田の満仲から只の饅頭へ
  第三章 音から連想 補完の補足……「まんちう」の「契り」
  第四章 意義から連想……多田の満仲から多田の薬師へ
  第五章 多田の薬師の知名度……絵画の記録から
  第六章 多田の薬師の知名度……文章の記録から
  第七章 『坊つちやん』の東京……忘れられた下町
  第八章 連想「小日向の養源寺」……米山保三郎のこと
  第九章 多田の薬師にまつわる連想力……連想力が消えたわけ
  第十章 葛飾北斎と『坊つちやん』の世界……福本和夫を手本に
  第十一章 坊つちやんの生まれ育ち……絞って連想
  第十二章 坊つちやんが挑んだ上総掘り……仕掛けと分布
  第十三章 東京ことば……山の手・下町
  第十四章 坊つちやんの東京ことば……巻き舌・べらんめい調等々
  第十五章 漱石と多田の薬師……接点を探る

  付録その一 多田の満仲と只の饅頭との洒落一覧
  付録その二  湘南高踏無稽百人一首
  付録その三  昨日も狂歌明日も狂歌日記
  付録その四  不承知「指導力不足教員」物語

       


漱石異説『坊つちやん』練想…指導力不足教員としての坊つちやん
                                              /文芸社/2005年5月刊
◆漱石異説シリーズの第五作目で、最新作。
◆坊つちやんを教師の面から捉えて、最近話題の指導力不足教員問題と絡めて論評。『坊つちやん』論として希有な存在。
◆著者は、知らぬ間に指導力不足教員と判定されながら一年間も放置されたという摩訶不思議な事件を身近に見聞する。この特異な見聞に教示をえて、『坊つちやん』論に新たな論点を付加。
◆とはいえ、著者はこの不可解な放置事件に遭遇して教師としてすっかり動揺。気弱な著者にとって教師生活は精神衛生上困難となりつつある。2005年3月末には高校教師を早期に退職し、執筆に専念。
◆日和見て  一世一代  大博打


   →指導力不足教員放置情報
    [目次の列挙]

 まえがき

  第一章 情緒と連想−−『坊つちやん』論の視点
   一、『坊つちやん』論で四著作
   二、愛論四回は『坊つちやん』が名作の証し
   三、ズレで触発された『坊つちやん』偏・愛論
   四、情緒のズレ
   五、連想のズレ
   六、再び『坊つちやん』が名作の所以

 第二章 『坊つちやん』の謎−−『坊つちやん』論に見える教師像
   一、『坊つちやん』自体の論じにくさ
   二、教師論としての論じにくさ
   三、平岡論文「小日向の養源寺」について
   四、川嶋論文「学校小説としての『坊つちやん』」について

 第三章 作者漱石の評言
   一、漱石の教育観−−「中学改良策」・「愚見数則」より
   二、漱石の教師観−−『私の個人主義』より
   三、漱石の『坊つちやん』評−−書簡と談話より

 第四章 『坊つちやん』を読む上での留意点−−語りの問題
   一、語りの構造
   二、宛にならない語り手
   三、宛にならない語りの諸例その1 うらなりに関して
   四、宛にならない語りの諸例その2 赤シヤツによる離間策に関して

 第五章 検証・教師としての坊つちやん
   一、坊つちやん「敵地へ乗り込む」、<べらんめい授業事件>発生
   二、<べらんめい授業事件>の影響、諸事件続発す
   三、バッタ事件・咄喊事件の勃発
   四、バッタ事件・咄喊事件の処理をめぐって
   五、バッタ事件・咄喊事件その後

 第六章 坊つちやんの魅力
   一、元祖指導力不足教員としての坊つちやん
   二、『坊つちやん』の粗筋一覧
   三、坊つちやんの美質
   四、『坊つちやん』の謎を解く

 あとがき

       


漱石異説四角四面論…『坊つちやん』『道草』『文学論』『私の個人主義』
                                                   200X年X月刊
◆漱石異説シリーズの第六作目準備中。
◆「凡そ文学的内容の形式は(F+f)なることを要す」で始まる『文学論』は、『資本論』なみに難解で、漱石作品理解に活用されない。だが、そこにある「間隔論」「道化趣味」「無意識的洒落」「仮対法」「不対法」は、『坊つちやん』の面白みを増す。
◆漱石自身は『私の個人主義』で『文学論』を「失敗の亡骸」と呼ぶが、これは謙遜。真に受けないこと。『私の個人主義』でいう「自己本位」は『文学論』で確立。
◆「自己本位」は『道草』においては「異様な熱塊」として出現。
◆『道草』は『文学論』=学問的「自己本位」から『坊つちやん』=創作的「自己本位」への転換を描写。
◆かくして『坊つちやん』『道草』『文学論』『私の個人主義』は、四角関係として四角四面に論じられるべきものとなる。
    [目次の列挙]

◆第一章 『文学論』から『坊つちやん』を読む……『文学論』の「間隔論」「道化趣味」
    「無意識的洒落」「仮対法」「不対法」を紹介しながら『坊つちやん』の面白さを鮮明
    にする。

◆第二章 『私の個人主義』の構造……「鶴嘴」と「鉱脈」を鍵言葉にしながら、『私の個
    人主義』が学習院での講演記録であることに遡って、その構造を明らかにする。

◆第三章 『私の個人主義』から『道草』を読む……漱石は直前の講演で次作の動機を語
    る癖がある。『私の個人主義』の「自己本位」は『道草』では「異様な熱塊」として出現。
    『私の個人主義』を手がかりに「自己本位」的「異様な熱塊」物語として『道草』を読む。

◆第四章 『文学論』から『坊つちやん』へ、『道草』の主題……『道草』は一面では日常
    的雑事に煩わされる「不愉快」物語。この「不愉快」描写の中から、文学に関わる上で、
    学者的にか、作家的にか、といった葛藤・逡巡として、『道草』の主題を剔出。

◆第五章 補論「自己本位」と「則天去私」……「自己本位」を文学創造の原動力、「則天
    去私」をその制御装置というふうに、比喩的にとらえながら、両者の関連を検討するこ
    とをもって、本書の締め括りとする。


テーマ紹介へ進む